元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~

音楽フェス案件の打ち合わせが本格的に始まった。会議室のモニターには、大型フェスのロゴ。続いて出演アーティスト一覧、そしてタイムテーブルといった項目が次々と映し出されて行く。


「まずターゲット層ですが・・・。」


ひとりの社員が口火を切った。


「フェスはやっぱり若者向けイベントです。20代の特に前半が中心になると思います。」


「そうとばかり言えないんじゃないかな?」


それに対して、疑問の声が上がる。


「出演予定のアーティストの名前も、30代、40代にもささる顔ぶれが何組もいるし、だいたいフェスイコ-ル若者っていう発想は、あまりにも固定観念が過ぎるよ。」


そんな感じで始まったこの日のミ-ティングは、徐々に熱を帯びて行く。
 

「だから、『映える』だけじゃ弱いんですよ。」


広報チームの社員が身を乗り出した。


「今のイベントは体験型なんです。だから、SNS拡散を前提に組まないと意味がない。」


「でも企業ブースが前へ出すぎると、フェスの空気壊しますよね?」


すぐに反論の声が上がる。


「来場者って、広告感が前に出た瞬間、冷めるんで。」


「じゃあスポンサ-側のメリットはどうするんです?」


「そこをうまく企画で補って行かなきゃ・・・。」


言葉が次々とぶつかり、正面のホワイトボードに書き込みが増えて行く。フェス案件は難しい、企業側の論理と音楽側の熱量、その両方を成立させなければならない。