元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~

ガチャリ、控室のドアが開いた。緊張の面持ちを隠せない湊を先頭に、今日のトリを務める『Riot Beat』のメンバ-がステ-ジに向かって行く。


司会から、彼らの登場が告げられると既に大歓声が上がり、実際に彼らがステ-ジに姿を現すと、ボルテ-ジは最高潮を迎えた。今日は自大学でのステ-ジ。本当ならトリを務めるべきは、和那たちだったかもしれない。


だが、そんなことを無念に思っているメンバ-は誰もいなかった。自分たちの世代の最後を締めくくるにふさわしいバンドは、『Riot Beat』しかない。和那たちだけでなく、今日参加した全てのバンドのメンバ-がそう認めていた。


「見届けるぞ。奴らの、いや俺たち4年生のラストステ-ジを。」


「うん。」


悠真の言葉に頷いて、和那たちは観客席へ飛び出して行く。


「さぁ、いよいよラストだ。盛り上がって行くぞ!」


ステ-ジでは湊が観客に叫んでいる。空気が変わった、歓声がますます大きくなる。


ドラムカウント。そして、最初の一音、低音が落ちた。


(重い、でも決して濁っていない。)


ベースだからギターより前へ出ない、でも・・・気づけばその場にいる全員が、朝比奈湊の音へ引っ張られていた。


(ベースで、こんなに空気を変えられるなんて・・・。)


和那は改めて、その才能に舌を巻いた。


曲が進む。圧倒的な熱量で会場の観客たちを熱狂させる『Riot Beat』、その中心に湊がいる。


気が付けば、最後の曲が始まる。疾走感のあるイントロを奏で出した、湊たちを眩いばかりのライトが照らしている。歓声が上がり、観客が拳を振り上げ、そして


「まだ、終わらねぇぞ!」


湊が大きな声で叫んだ。


(湊・・・。)


その言葉に、和那は胸をつかれる。