元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~

会議室を出て、静かに息を吐き、ようやく肩の力を抜くと


「さすがですね、南澤さん」


部下が、感嘆した声と共に熱い視線を向けて来る。


「無事通ってよかった。」


「いや、無事なんてレベルじゃないですよ。ほぼ完璧、そして完勝です。」


「そう?」


「そうですよ。あそこまで綺麗に決まるの、なかなか見られませんって。」


その少し大げさな言い方に


「準備しただけだよ。」


微笑を浮かべて答えた和那は、『結果は、準備の延長に過ぎない。』と続けた心の中の言葉を口では紡がず


「さ、帰ろう。」


と言って、何事もなかったように歩き出した。


(株)ネクストリンク。広告企画からイベント運営まで、幅広く手掛ける総合広告代理店。これが和那たちが勤める企業だ。帰社して、オフィスに入ろうとすると


「南澤くん、お疲れ!」


結果を聞きつけた営業部長が、それこそ満面の笑みで待ち構えていた。


「いやぁ、お見事。その一言だよ。本当にありがとう。」


「お褒めに預かって恐縮です。」


「今夜、さっそく祝杯を挙げるか?」


「資料整理が終わったら考えます。」


「はいはい、社交辞令ありがとう。」


苦笑いながら去っていく背中を見送り、和那は自分もオフィスに戻った。