元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~

「早速だが、こちらを見て欲しい。」


スクリーンへ資料が映し出される。そこに表示された文字を見て、和那は思わず目を細めた。


『SUMMER BEAT FES』


国内大型野外フェス、若年層向けブランド戦略の一環として、スポンサー企業数社と連動する大規模案件だった。


「うちには、フェス全体のプロモーション設計と企業ブース統括を任せたいそうだ。」


部長が続ける。


「出演アーティストの選定と交渉、SNS展開、ライブ映像の配信企画、会場の設営等々、全部込みだ。」


それはまさしく「音楽の現場」だった。かなり難易度も高い。


(でも、これを成功させられば、ウチの会社としても大きい・・・。)


そのことは、和那にはすぐにわかった。


「南澤くん。」


そこで役員が口を開いた。


「はい。」


「音楽案件なら、君の出番だ。君と君のチ-ムに担当してもらいたい。」 


会議室の視線が集まる。この場に呼ばれた以上、そして話の流れからもそういうことなのだろうと、和那は当然予期していた。


「分かりました。」


一瞬の躊躇いもなく、彼女はそう答えていた。サラリ-マンとして、上司の指示にノ-と言う選択肢はないのも確かだが、それ以上に「やりたい」「やらなきゃ」という思いの方が強かった。