元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~

「ナミ、疲れてるんだよ。無理しない方が・・・。」


「だ、大丈夫だよ。本当に。だからさ、機嫌直してよ。」


「別に怒ってるわけじゃないけど、ナミが心配だからさ。」


「本当に大丈夫だから。」


平身低頭の和那に


「じゃ、気分転換にカラオケでも行こうか?」


柚希があえて明るい声で言う。


「いいですね~。柚希サンの美声を久しぶりに是非聞かせて下さいませ。」


「なに、それ?」


おちゃらける和那に、思わず苦笑を浮かべながら、柚希は立ち上がった。それからは賑やかな時間を過ごしたふたり。夕飯を共にし、いよいよ解散となった時だ。


「じゃ柚希、今日はありがとう。それに今度みんなに会った時はよろしく伝えといてね。」


笑顔でそう言った和那の顔を、柚希は少し見ていたが


「ねぇ?」


「うん?」


「ナミがウチらとのセッションに顔出さなくなったのは、ひょっとして、朝比奈湊がいなくなったから?」


「えっ?」


突然の柚希の言葉に、和那は思わず息を呑む。


「さっきのカラオケであんな楽しそうにリズム取ってたナミが、急にセッションに来なくなるなんて絶対におかしいよ。彼のこと、ずっと応援してたもんね。ナミ。だから、それにショック受けて、自分も音楽やりたくなくなったのかもって・・・。」


「全然関係ないよ。彼のことはショックだったけど、でもそれとこれとは全然関係ないし。」


慌てたように言う和那に


「ならいいけど・・・。でも彼も何にも言わないで消えちゃってさ。今は、どこで何をしてるんやら・・・。」


ため息交じりに柚希は言う。その言葉に、和那は何も返すことは出来なかった。