元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~

ふたりが出会った高1のクラスには、「カズナ」という名前の女子がもうひとりいた。どう呼び分けようかということになり、南澤という苗字の頭を取って「ミナ」はどうかという案が出たが、実はクラスメイトに「ミナ」という名前の女子もいて


「じゃ、苗字の中を取って、『ナミ』にしよう。」


と断を下したのが、他ならぬ今、和那の目の前に座っている柚希だった。和那たちが入学した高校は、大学までエスカレーターで行けるいわゆる系列校だった。受験前の学校説明会での


「勉強は必要最小限で構いません。部活動や校外活動を全力でやりながら、4年制大学に行きたいなら、是非ウチに来てください。」


という説明が、和那の心を掴んだのだ。


実際に校風はおおらかで自由、ほとんどの生徒が部活動に限らず、自分の打ち込みたいものに目を輝かせて取り組んでいる。そんな学校だった。


「この学校なら、本当に思いっきり青春出来そうだね。」


「そうだね。」


「さて、私たちは何をやろうか?」


出会って、すぐに意気投合した和那と柚希。ふたりを結びつけたのは音楽だった。


『俺は娘が生まれたら、絶対にピアノをやらせるって、昔から決めてたんだ。』


そんな父親のクラシックな固定観念から、幼稚園からピアノ教室に入れられた和那だったが、本人もすぐに嬉々として通うようになり、中学では校歌の伴奏を任されるくらいの腕になっていた。


一方の柚希もピアノが音楽との関わりのスタ-トだったが、今では彼女の関心はギタ-にシフトしていた。


「音楽の部活って言えば、まぁ吹奏楽部だけど・・・。」


「吹部じゃギタ-の出番はないよ。」


「そうだね・・・。」


「そこでさ、ナミ。」


「うん。」


「バンド組まない?女子だけで。」


「バンド?」


柚希が笑顔で、和那に誘いを掛けた時、彼女は既に他のメンバ-のアタリをつけていた。こうして、和那の大学卒業までの足掛け7年間に渡るバンド活動がスタ-トした。