元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~

そんな彼女の様子に、湊は一瞬困惑の表情を浮かべたが、やがて意を決したように


「ついていけません。」


小さい声で言った。


「えっ?」


「南澤さんの求める仕事の基準が、今の俺には高すぎます。スピードも、精度も・・・。」

 
「朝比奈さん・・・。」


「それに・・・。」


「それに?」


と言った和那の声は、戸惑いの色を帯びている。


「正直に言わせてもらうと・・・南澤さんとは話し辛いです。モノも聞きにくいです。」


湊の一言で、空気が固まった。


「なんで?」


ようやく尋ねた言葉に


「南澤さんは俺に対しては常に否定から入るんで、話してるとしんどいんです。」


吐き出すように言った湊は


「自分が仕事出来ないことを棚に上げてって思われるでしょうけど・・・すみません。」


と続けて、視線を落とした。


一方、思わぬ湊の言葉に、和那は言葉を失っていたが


「それは・・・。」


ようやく、言葉を紡ぎかけたが、後が続かない。沈黙、そして・・・


「わかった。」


和那は絞り出すように声を出した。