そんな日々が続き
「さすがに試用期間終了で切られるだろう。」
社員たちはそう噂したが、実際にはそんなことはなく、彼は正社員に登用された。唖然とする社員たちに同調する気持ちが全くなかったわけではなかったが、でも、和那だけはそのことに内心胸をなでおろしていた。
(見捨てるわけにはいかない。)
彼女の中には、そんな使命感がまだあった。だが、状況は・・・変わらない。あの、デ-タ誤送信騒動のあった翌日。
プレゼン資料の作成に没頭していた和那は、オフィスの中に、小さな音が混ざっているのに気づく。
キーボードの打鍵音、電話の着信音、紙をめくる音。そんな中に・・・規則的な、微かなリズムが紛れていた。
――トン、トン。
無意識のような、それでいて正確な間隔。音の粒が、やけに揃っている。思わず、和那は顔を上げる。
視線の先、湊の指が、デスクの端を軽く叩いていた。考え込んでいるときの癖なのか、視線は資料に落ちたまま。
周りには、まるで聞こえていないみたいだった。でも、和那には・・・分かる。
あの頃、何度も聞いた音。リズムを刻むときの、無駄のない動き。息をするみたいに自然で、だからこそ、誤魔化せない。
(湊・・・。)
だが、そんな時間は、ひとりの社員の声で遮られた。
「南澤さん。」
「はい。」
「これ、見て下さい。」
「?」
「朝比奈にまとめるように指示した資料です。」
呆れ顔と共に、差し出されたペーパ-に、目を通した途端、和那の表情が硬くなった。
「朝比奈さん、ちょっと。」
和那の声に、湊は物憂げな表情で立ち上がった。
「さすがに試用期間終了で切られるだろう。」
社員たちはそう噂したが、実際にはそんなことはなく、彼は正社員に登用された。唖然とする社員たちに同調する気持ちが全くなかったわけではなかったが、でも、和那だけはそのことに内心胸をなでおろしていた。
(見捨てるわけにはいかない。)
彼女の中には、そんな使命感がまだあった。だが、状況は・・・変わらない。あの、デ-タ誤送信騒動のあった翌日。
プレゼン資料の作成に没頭していた和那は、オフィスの中に、小さな音が混ざっているのに気づく。
キーボードの打鍵音、電話の着信音、紙をめくる音。そんな中に・・・規則的な、微かなリズムが紛れていた。
――トン、トン。
無意識のような、それでいて正確な間隔。音の粒が、やけに揃っている。思わず、和那は顔を上げる。
視線の先、湊の指が、デスクの端を軽く叩いていた。考え込んでいるときの癖なのか、視線は資料に落ちたまま。
周りには、まるで聞こえていないみたいだった。でも、和那には・・・分かる。
あの頃、何度も聞いた音。リズムを刻むときの、無駄のない動き。息をするみたいに自然で、だからこそ、誤魔化せない。
(湊・・・。)
だが、そんな時間は、ひとりの社員の声で遮られた。
「南澤さん。」
「はい。」
「これ、見て下さい。」
「?」
「朝比奈にまとめるように指示した資料です。」
呆れ顔と共に、差し出されたペーパ-に、目を通した途端、和那の表情が硬くなった。
「朝比奈さん、ちょっと。」
和那の声に、湊は物憂げな表情で立ち上がった。



