わたしは安福先輩の何ですか?

―ダンッ

と、勢いよく粋先輩が壁に手を打ち付けた。
壁と粋先輩に挟まれて、伸びてきた腕に捕らえられる。

それにびっくりして目を見開いた。


でも逃げない、粋先輩から目を逸らさない。


「いいの?またキスするかもしれないのに」

ゆっくり、粋先輩が近付いたとしても。

ちゃんと向き合うって決めたんだから。

「しませんよ、粋先輩は」

真っ直ぐ粋先輩の方を見て、グッと瞳に力を入れた。

わかっていたから、そんなことしないってわかってた。

「しようとしていつもギリギリのところで止めるのは粋先輩の方ですよね」

もう3度目だもん、わかってる。

粋先輩はそれ以上近付かないの、それ以上私に近付いて来ようとしないの。
ピタッと不自然に止まるから。


だから粋先輩が本気でキスしようとしてたなんて、思ってないことわかってたー…


「粋先輩、ごめんなさい」


まだあったから、私が粋先輩に言わなきゃいけないこと。


言えてないこと、ちゃんと答えなきゃいけなかったことー…


「私は安福先輩のことが好きなので粋先輩とは付き合えません」


視線を落とした粋先輩が俯いた。

だらんと力の抜けた体が壁に寄りかかる。 少しだけ私に触れて、粋先輩の息が首にかかった。

「本当、みらのは蒼ちゃんのことばっかだよ」

粋先輩の温度が近くて、動けない。

どうしてかわからないけど私の方が泣いちゃって、胸が痛かった。

きゅぅって押しつぶされるみたいな、きっとこれが恋なんだなって。

誰かを想うのも、想われるのも、キラキラ見えてそればっかりじゃないよね。
そんなの私が1番よくわかってたはずなのにね。

涙を拭う、ズキズキと痛む胸をなでてゆっくり息を吸った。


これが私の1番言いたいことだからー…


「ありがとうございます、粋先輩」


私を好きになってくれて。
粋先輩がいてくれて、私は嬉しかったです。

まぁちょっとむかつくけど、なんて言ったらまた粋先輩に怒られちゃうかもしれないけどね。