ロマンスに、キス




佐野は、泣くあたしを見て、無言で「ちょっと来い」と手首を強引に引っ張った。



「痛い、やめて」



必死で抵抗しても、佐野はまったく気に留めず、ぐんぐんと歩く。

身長は違うし、歩幅だって全然違うのに。
優しさの欠片もない。

でも、ああ、怒ってるんだな、と嫌でも分かる。
佐野を怒らせたら、後で面倒なことになるって、頭では理解しているのに、体は反抗してしまう。



近くにあったファミレスに連行され、向かい合わせで座らされる。
泣いている顔を、正面から丸見えにされてしまった。



もう、どうでもいいかも。
そう思った瞬間、またポロポロと涙がこぼれる。



はあ、とため息をつく佐野の表情が、視界の端に入っただけで、また胸がきゅうっと痛む。
ちょっとは「大丈夫?」とか言ってくれればいいのに。



そう思う自分に、さらにイライラする。

泣きたいのに、怒りたいのに、プライドは傷つくのに、佐野の態度ひとつで、心がぐちゃぐちゃに揺れる。