ロマンスに、キス




最悪だ。

一生、見たくなかった顔。



「元気してんの?」



声が、耳にまとわりつく。返事なんて、できるわけがない。



「……。」


「おい、無視かよ」



気にしない。
大丈夫。

何度も、自分に言い聞かせる。


再び、携帯に視線を落とす。画面はちゃんと光っているのに、文字がまったく頭に入ってこない。キーボードを打つ指が、わずかに震えているのが、自分でもわかる。



――ああ。
あたし、怖いんだ。



もう平気だと思ってた。乗り越えたつもりでいた。

でも違う。まだ、こいつのことが怖い。


その事実に気づいてしまった瞬間、胸の奥がぎゅっと締めつけられる。こんなにも時間が経ったのに、こんなにも努力してきたのに。

乗り越えられていない自分が、情けなくて、悔しくて。


涙がこぼれそうになるのを、必死でこらえる。


こいつの前だけでは、絶対に泣きたくなかった。
負けたくなかった。