ロマンスに、キス




佐野は、ほんの少しだけあたしの太ももに頭を押しつけた。



「じゃあ、静かにして。起こして」



……ムカつく。さっきまで眠くないって言ってたくせに。眠くないのに、なんでこんな体勢で膝に乗ってきて、しかも“起こして”なんて要求できるわけ?


勝手すぎる。図々しすぎる。


でも、あたしは何も言えなくなる。

だって、膝の上で目を閉じて呼吸を整える佐野は、どう見ても気持ちよさそうで―― その姿に、あたしの方が振り回されてる。



「…早く、寝なよ。時間なくなるよ」



あたしがそう言うと、膝の上の佐野はまるで子どもみたいに素直に、「ん」 とだけ返した。
その一音が、やけに気の抜けた、気持ちよさそうな声で。


……なんで。なんで、あたしがこんなことしてんの? さっきまでキスなんてしてきたくせに、今は当たり前みたいに寝転んで、あたしの体温で眠ろうとしてる。



「……はあ」



小さくため息をつく。

でも、どける気にならない自分が一番意味不明だ。
佐野の呼吸がゆっくり落ち着いていく。そのリズムが太ももを通して伝わってきて、なんだか妙に落ち着かなくなる。