ロマンスに、キス




――言った。言ってしまった。最悪だ。自分から、あんな屈辱的な情報を吐くなんて。
ファーストキス。よりによって、こいつで。絶対に許したくないのに。

そんなあたしを眺めて、佐野は少しだけ目を細め、呆れたように、でもどこか興味深そうに言った。



「最初から思ってたけど、どこが天使なんだよ?真逆じゃね?」



カチン、と頭の中で何かが弾けた。もう、いい。こいつに天使扱いされる必要なんて最初からなかった。演じる気も、もうさらさらない。
ムカつく。

ほんとにムカつく。大っ嫌い。 胸の奥がじりじり燃えるみたいに熱くて、目の前の男の顔を見るだけで苛立ちが増えていく。

でも、何を言っても無駄だ。あたしの怒りも、羞恥も、この男には届かない。

ふー、と深呼吸。落ち着け。落ち着け。
こんなのに感情を乱されるの、馬鹿みたい。もう謝らせるのも諦めよう。あんなキス、なかったことにすればいい。あんなの、ファーストキスなわけがない。



「…土下座しなくていいから、一個だけ言うこと聞いて」

「上から目線だな」



当たり前でしょ。文句ある?