「ステムのサンプル返しておくね」
堀田さんは、チタンなどでできている人工関節の部品を廉太郎くんに渡している。
「おかえり、俺のステムちゃん」
ステムちゃん?
廉太郎くんは、骨の中に挿入するその部品を愛おしそうに撫でた。
その様子を見た堀田さんが、くすくす笑っている。
「骨マニアなのは相変わらずね。先生待ってるよ。奥にどうぞ」
「すぐ行きます。英奈、ごめん。ちょっと待っててくれない?」
名残惜しそうな様子で廉太郎くんは、ドクターとの面会のために診察室に入っていった。
待つように言われたけれど、私のほうは特に話すこともない。
高校生の頃、ひそかにあこがれていた彼から告白されて舞い上がっていたら、三日後に振られて地獄に落とされた。
完全に黒歴史になっている昔話をしてもむなしいだけだ。
そう思った私は、すぐに病院を出て電車に飛び乗った。
廉太郎くん、顔立ちがいっそう精悍(せいかん)になってたな。
堀田さんは、チタンなどでできている人工関節の部品を廉太郎くんに渡している。
「おかえり、俺のステムちゃん」
ステムちゃん?
廉太郎くんは、骨の中に挿入するその部品を愛おしそうに撫でた。
その様子を見た堀田さんが、くすくす笑っている。
「骨マニアなのは相変わらずね。先生待ってるよ。奥にどうぞ」
「すぐ行きます。英奈、ごめん。ちょっと待っててくれない?」
名残惜しそうな様子で廉太郎くんは、ドクターとの面会のために診察室に入っていった。
待つように言われたけれど、私のほうは特に話すこともない。
高校生の頃、ひそかにあこがれていた彼から告白されて舞い上がっていたら、三日後に振られて地獄に落とされた。
完全に黒歴史になっている昔話をしてもむなしいだけだ。
そう思った私は、すぐに病院を出て電車に飛び乗った。
廉太郎くん、顔立ちがいっそう精悍(せいかん)になってたな。



