初恋リスタート

彼は廊下を進みながら聞いてくる。


「うん」
「チューハイ買い損ねた? ビールならあるぞ」


チューハイに手を伸ばそうとしていたところで、声をかけられたんだっけ。


「ありがとう。でもいいよ」
「不思議だよな。真面目な英奈がチューハイ飲んでるんだから。酒強かったりする?」


たしかに、どちらかというと陰キャに属していた私の印象はそうだろう。

一方彼は、高校時代からこっそり飲んでいそうなイメージだ。


「好きだけど、強くはないかな。いつも一本でやめとく」
「そっか」
「廉太郎くんはこれから作るの?」
「いいねえ、その廉太郎くんっての」


彼が私を『英奈』と呼ぶので、ついあの頃の呼び方をしてしまったけれど、馴れ馴れしかっただろうか。


「江島くん」


言い直すと、彼は足を止めて不機嫌な顔をする。


「廉太郎くんでいいって。なんなら呼び捨てでも」
「呼び捨てなんて無理」


恋人でもない男性を呼び捨てにはできない。


「まあ、そのうちな」