初恋リスタート

助けてくれたというのに、彼はそんなふうに謝りながら隣までやってきてしゃがんだ。


「立てる?」
「う、うん」
「本当にありがとうございました」


彼に腕を支えてもらいながら立ち上がり、頭を深々と下げた。

あのまま家に帰っていたら、アパートを特定されていただろう。
ううん、もしかしてもうされてる?

ふとそんなことを考えると、また震えがくる。


「そんな他人行儀な」


他人でしょ?


「……あの人はどこに?」
「俺は撒いたほうだから、行先まではちょっと……」


それはそうだと納得するも、アパートの前で待ち伏せされたらと顔が引きつる。


「家は近いの?」
「三丁目」


ここから歩いて十分かからないくらいだ。


「そんな近くに住んでたんだ。このまま帰るのは怖いよな。よし、泊まってけ」
「は?」


彼が軽い口調でそう言うので、目をぱちくりさせる。

元カレの家に泊まるなんて、とんでもない。

ああ、でも奥さんがいるならふたりになることはないのか。