初恋リスタート

私が外に出ると、廉太郎くんはこちらを見ることなくごみ箱にごみを捨てる振りをしている。

まるで俳優のような自然な演技に驚きつつ、私は店を離れて歩きだした。


まずは左折。

心の中で確認しながら早足で歩いていると、背後から「あっ!」という廉太郎くんの大きな声と物音が聞こえた。

振り向いてちらりと確認すると、廉太郎くんが買い物袋の中身を歩道にぶちまけている。


「すみません、うっかりして。拾うの手伝っていただけませんか?」


彼は予想通りついてきていたストーカーの前に立ち塞がって、両手を合わせた。

今のうちに、逃げなくちゃ。

私は再び前を向きひとつ目の角を曲がったところで走りだす。


「二本目も左。右側の三軒目……あった」


年季を感じさせる二階建ての大きな一軒家にまほろば荘という表札を見つけ、勝手に庭に飛び込んで石塀の陰に隠れた。


撒けた? 廉太郎くん、大丈夫? 揉(も)めていなければいいのだけれど。