初恋リスタート

目を動かして隣の男性を見ると、そこにいたのは険しい表情の廉太郎くんだった。

なんでここにいるの?

聞きたくてたまらないが、それより今はあの不審者だ。


「あの男、知り合い?」


顔が見えないので確認できないけれど、この駅の周辺に知り合いなんてひとりもいない。

それに、知り合いであれば声をかけてくるだろう。


「ううん」


これはストーカーで間違いないかもしれない。

途端に鳥肌が立ち、嫌な汗が噴き出してくる。


「どうしよう……」
「家が近いんだったら、このまま帰るのは危険だ。撒(ま)くか? 手伝うぞ」


カムフラージュのためか、廉太郎くんはショーケースを開けてビールを取り出しながら話を続ける。

手伝ってくれるの?

もう二度と会いたくないと願っていたとはいえ、ここはお言葉に甘えておくべきかもしれない。

さりげなくレジを見てみたけれど、母くらいの年齢の女性と大学生くらいの女性がいるだけ。

助けを求めても男性相手に力では敵わない。