詩音と海と温かいもの

 うちの親と詩音ちゃんと俺の四人で飯を食って、親たちは小崎町に帰っていった。俺と詩音ちゃんは手を繋いで、少しだけ歩いた。
 寮に向かう途中の信号待ちで、ふと詩音ちゃんを見た。


「卒業おめでとう、詩音ちゃん」

「ありがとう、匠海さん。……私、高校卒業したよ」


 詩音ちゃんが恥ずかしそうな、でも真面目な顔で俺を見上げた。

 ……言いたいことは、わかっているつもりだ。


「明日じゃダメ?」

「私、四年待ったんだけど」

「それは俺もそうだよ」


 信号が青になった。

 周りには誰もいなくて、俺らは歩き出せずに立ったままだった。

 繋いでいた手を離した。

 詩音ちゃんの肩に手を置いて屈む。

 一瞬だけ顔を寄せて、すぐに離した。

 手を華奢な肩から離して、また繋ぎ直す。

 今度は指を絡めた。

 信号は点滅して赤に変わった。


「続きはまた明日」

「……うん」


 黙ったまま指を強く握り合って、信号が変わるのを待つ。

 そのまま寮まで詩音ちゃんを送り届けた。

 俺はダンボール箱だらけの部屋に戻って、一人で寝た。