僕は吸い込まれるようにベッドへと潜り込んだ。
厚手の毛布が冷えた体を包み込む。けれど、一番の暖かさはその直後にやってきた。
「お邪魔しまぁーす」
シーツが微かに擦れる音と共に、蒼が僕の隣に潜り込んできた。
狭い病院のベッド。二人の距離は、先ほどのキスよりも近く、お互いの鼓動が重なり合って聞こえるほどだった。
「⋯⋯あったかいな、蒼」
「佑介くんの方が、もっとあったかいよ」
彼女は僕の胸元に顔を寄せ、そっと腕を回してきた。
添い寝というにはあまりに無防備で、あまりに切実な接触。
彼女の長い髪から漂う、あの桜の香りが、僕の混濁した意識を優しく宥めていく。
「ねえ、佑介くん。今日のこと、ずっと忘れないでね」
「忘れるわけないだろ。手帳にも書いてるし、ここにも⋯⋯」
僕は自分の胸を指差した。けれど、言葉を紡ぐ端から、激しい眠気が意識を刈り取ろうとする。
蒼は「ありがと」と微笑んだ。
「⋯⋯おやすみ」
僕は彼女を抱きしめる腕に力を込めた。
けれど、その感触が、まるですり抜ける砂のように徐々に希薄になっていくのを感じていた。
幸せの絶頂で、僕は一つの確信を抱いた。
次に目を覚ました時、世界が今までと同じ色をしている保証はどこにもない。
僕は蒼の体温に縋り付くようにして、奈落のような深い眠りの底へと、真っ逆さまに落ちていった。
