僕たちは病院の重い自動ドアを潜り抜けた。
一歩外へ出た瞬間、肺の奥まで凍りつかせるような鋭い冷気が僕を包み込む。
その冷たささえも、今の僕には生きているという実感を与えてくれる心地よい刺激だった。
「はやく行こ!クリスマス終わっちゃう」
蒼が子供のように声を上げ、空を仰ぐ。
彼女の白い息が冬の空気に溶けていく様を見て、僕は無意識に彼女の細い手を握りしめた。
駅へと続く道は、クリスマス一色の賑わいに満ちていた。
色とりどりのオーナメントで飾られた街路樹、スピーカーから流れる陽気なクリスマスソング。
幸せそうに笑い合う家族連れや、恥ずかしそうに距離を詰める若いカップルたち。
その誰もが、僕の隣を歩くこの美しい少女が幻覚であるなんて疑いもしない。
人々が彼女を避け、波のように道を作る。
それは彼女が実体として認識されている証拠ではなく、ただ僕の脳が、周囲の人々の動きを都合よく書き換えているだけかもしれない。
けれど、そんな理屈はどうでもよかった。
僕は彼女の隣を歩き、彼女の視線が向く先を一緒に見つめる。
この雑踏の中で、彼女が誰にもぶつからず、誰からも傷つけられないように。
僕は騎士のような心地で、彼女を守るようにして、街へと繰り出した。
⋯⋯ちなみに、蒼は切符なくても電車乗れるー!と一人で先に行くので、手を離さないことにした。
