十二月二十五日の朝。
病室の窓の外には、抜けるような冬の青空が広がっていた。
けれど、窓ガラスに触れれば、指先が凍りつくような冷気がそこにあることを教えてくれる。
僕はクローゼットの前で、一ヶ月以上袖を通していなかった私服と向き合っていた。
ダークネイビーのチェスターコートを羽織る。
「⋯⋯よし」
自分に気合を入れるように襟を正す。
ポケットには、小林先生から「体調が悪くなったら、迷わずこれを使うんだよ」と念押しされた緊急用の薬が入っている。
それは、僕がこの一日を手に入れるために、先生と交わした命の契約の証でもあった。
ふと、サイドテーブルに目をやると、一昨日まで蒼が着ていた黒いモコモコのジャンバーが、驚くほど綺麗に畳まれて置かれていた。
彼女に貸していた僕の服。
そこにはもう、彼女の桜の香りは微かにしか残っていない。
ノックの音が響き、ドアが開く。
「佑介くん、準備できた?」
そこに立っていたのは、僕の想像を遥かに超えて眩しい蒼だった。
白のふわふわとしたファーのアウターに、短めのプリーツスカート。
白のソックスに黒のローファーという組み合わせは、清潔感があって、それでいてどこか儚げな彼女の魅力を引き立てている。
「⋯⋯蒼、すごく、可愛いよ」
本気でそう言うと、彼女は少し照れくさそうに「佑介くんのコートも、すごくかっこいい」と微笑み返した。
