夢幻に消えた君と、存在しない約束の続きを。



喧騒の購買を抜け、病室に帰り着く。


ドアを閉めた瞬間、病院独特の消毒液の匂いと共に、外の世界とは切り離された二人だけの世界が戻ってくる。


「⋯⋯びっくりした。いきなりいなくなるんだもん」


僕はまだ少し乱れている呼吸を整えながら、蒼を椅子に座らせた。
彼女は申し訳なさそうに、冬服のカーディガンの裾を指で弄っている。


「ごめんね、佑介くん。あまりにぐっすり眠っていたから⋯⋯。お腹が空いた時に、佑介くんの好きなメロンパンがあれば喜ぶかなって思ったの」


彼女の優しさが、今の僕には何よりも痛い。
僕が丸一日眠り続けていたのは、脳が彼女を維持するために限界を超えていたからだなんて、口が裂けても言えなかった。

ましてや、小林先生から告げられた「一年もたないかもしれない」という期限のことも。


「いいんだ。⋯⋯それより、蒼。良い知らせがあるよ」


僕は彼女の座っている椅子の前のベッドに腰を掛けて、その透き通るような瞳を真っ直ぐに見つめた。


「先生から、許可をもらった。クリスマスの一日だけ病院の外に出られるって」


「えっ⋯⋯本当!?」


蒼の瞳が、驚きと喜びで大きく揺れた。


「本当だよ。約束しただろ?」


彼女が僕の腕に飛び込んできた。
その瞬間、僕の目から熱いものが溢れそうになったけれど、僕は必死にそれを堪え、彼女の細い背中を抱きしめ返した。