小林先生は一度深く溜息をつくと、椅子を引き寄せ、僕の目を見つめて告げた。
「厳しい話をしなければならない。今のペースで脳の浸食が進めば⋯⋯最悪の場合、一年以内に生命維持に必要な機能が停止してしまう可能性がある」
「⋯⋯死ぬ、っていうことですか」
意外なほど、僕の声は冷めていた。先生は否定も肯定もせず、ただ静かに頷いた。
「医学的に見て、今の君の脳は常にフル稼働している状態だ。幻覚⋯⋯つまり、君が『蒼』と呼んでいる存在を維持するために、膨大なエネルギーを消費しすぎている」
「蒼のこと⋯⋯」
「パン屋に行ってたときにね」
蒼を愛することが、僕の命を削っている。
その残酷な事実に、視界がぐにゃりと歪んだ。
「彼女を消さずに済む方法はありませんか」という問いを、僕は寸前で飲み込んだ。
消したくない。
彼女を失うくらいなら、一年という短い時間ですべてを使い果たしても構わない。
そんな狂気じみた決意が、僕の中に芽生え始めていた。
