夢幻に消えた君と、存在しない約束の続きを。



「ねえ、佑介くん。私ね、佑介くんに出会えて本当によかった。真っ白だった世界に、佑介くんが色をつけてくれたの」


蒼がベッドの端に腰掛け、僕の顔をじっと見つめる。
その瞳には、隠しきれない悲しみと、溢れんばかりの慈しみが混ざり合っていた。


「急にどうしたんだよ。イルミネーションも見るんだろ?」


「うん。でも⋯⋯佑介くん、本当はもう気づいているんでしょ?」


蒼の声が、震える。

特発性夢幻症候群。
僕の脳が作り出した、美しすぎる幻。


それを認めれば、この温もりは消えてしまう。僕は必死に、自分の中の正解を押し殺した。


「何を言ってるんだ。蒼はここにいる。僕の目の前で、冬服を着て、笑ってるじゃないか」


僕の声は、自分でも驚くほど悲痛な響きを帯びていた。

僕は堪らなくなって、蒼を抱きしめた。
彼女の体は、抱きしめるほどに輪郭が曖昧になり、僕の腕をすり抜けてしまいそうだった。


涙で視界が歪み、彼女の顔がぼやける。
必死にその姿を繋ぎ止めようと、僕は彼女の背中に手を回し、何度もその名前を呼んだ。


「それは、祐介くんが冬を意識したから⋯⋯私は幻なんだよ?」


「違う!⋯⋯これが病気なら、僕は一生治らなくていい!」


僕の告白は、もはや祈りに近かった。蒼は僕の胸に顔を埋め、声を殺して泣いた。


「⋯⋯私も、大好きだよ。佑介くん。本当は、幻覚なんかじゃなく、あなたの隣で同じ空気を吸って、同じ時間を生きたかった」


届かない願いが、静かな病室に響き渡る。
二人の涙が重なり、矛盾に満ちた愛が、夜の闇に深く刻み込まれていった。