エレベーターを降り、一階の購買へ向かう廊下を歩く。
パジャマ姿の患者たちに混じって歩く蒼は、借り物の大きなパーカーのせいか、どこか浮世離れした雰囲気を纏っていた。
「見て、佑介くん!あそこの棚!並んでるよ!」
購買の入り口に近づくと、焼きたてのパンの香ばしい匂いが漂ってきた。
蒼は一直線に駆け寄る。
「わあ⋯⋯、クロワッサンがキラキラしてる。こっちのメロンパンも、砂糖がたっぷり⋯⋯」
「一つにするんじゃなかったのか?」
「選べないもん!二つとも食べなきゃ失礼だよ」
蒼の勢いに圧倒されながら、僕はトレイにクロワッサンとメロンパンを乗せた。
会計を済ませる間、蒼は僕の後ろで「早く食べたいな」とソワソワしている。
「外、少し歩かないか?中庭なら静かだし」
僕の提案に、蒼は満面の笑みで頷いた。
「賛成!青空の下で食べるのが一番だよね」
周囲の視線を気にしながら、僕たちは小さな冒険を楽しむ子供のように、手を繋いで中庭へと向かった。
十一月の風が、蒼の髪を優しく揺らしていた。
