夢幻に消えた君と、存在しない約束の続きを。



朝の回診が終わり、トレイに乗せられたのは、味の薄そうな煮物と、湯気だけは立っている白粥だ。


それを見た瞬間、蒼は露骨に頬を膨らませて、箸を置いた。


「私、これ嫌い。病院の匂いがするもん」


「わがまま言うなよ。体にいいように作られてるんだから」


「やだ。もっとこう、サクッとしてて、甘くて、心が弾むようなものが食べたいの!⋯⋯ねえ、購買行こうよ。下にあるでしょ?」


蒼は僕の手をギュッと握り、潤んだ瞳で僕を見上げてくる。


​「購買って⋯⋯、外に出るのはあんまり良くないんじゃないか?」


「少しだけ!。私、パンの匂いを嗅がないと枯れちゃう⋯⋯」


「大袈裟だな⋯⋯。分かったよ、少しだけだぞ」


彼女の必死な訴えに、僕は結局折れるしかなかった。
財布の金が無くなりそうだ。


蒼は「やったぁ!」と飛び上がり、僕のパーカーの袖を捲りながら、足取りも軽く病室を飛び出していった。