夢幻に消えた君と、存在しない約束の続きを。



窓の外にある木に桜の花びらが付き始める。
目を奪われていると蒼は「えいしょっ」と、ベッドから降りて窓の枠に近づいた。

しまっていた窓を開けるっと一気に花吹雪が入る。


「綺麗でしょ?」


蒼のリネンワンピースのピンクと同じ桜の花びらが部屋に広がる。
幻想的な風景に目を奪われていると、彼女が窓のふちに足をかけているのを発見する。


「なにしてんの!?」


「え?花びら取ろうと思って」


いくら窓から近いとはいえ、小柄な彼女にしては少し遠いらしい。


「ちょっと待って⋯⋯僕の手なら届くかも」


ベッドから降りて、窓まで移動する。
縁に手を置き、すくし背伸びをしながら手を伸ばした。

茎の部分に手を添えて、ぷちっと折る。


「とれたよ、はい」


蒼の手のひらにそっと置くと、熱心に花を見つめていた。

虫でもついていたのかと、もう一度視線を戻すと花の色が薄くなっていた。
薄くなっているというか、消えかけていて、透けている。


「え、え?」


「枯れちゃいそう⋯⋯」


「枯れるとかじゃなくて、消えかけてない?これ」


花はみるみる透けていき、消えた。

僕の頭には「?」が浮かんでいた。


「やっぱり取っちゃうと消えちゃうかぁ⋯⋯」


蒼はそこにあった花びらを確かめるように、手を握りしめた。


「花。消えたけど⋯⋯えぇ?」


「うん、無理だね。諦めよう!」


一人取り残されてる感覚。
蒼はどちらかというと、陽の人なのだろう。先に進んでいく会話についていけなくなる。


「へくしゅ!!⋯⋯。ティッシュ⋯…」


「あ、ベッドの横の棚に入ってるよ」


がさがさと棚をあさりはじめて、見つけたティッシュの箱を開ける。

ティッシュの使い始めは取りづらい。
蒼は苦戦しつつ、五枚ほど取り出したあと、鼻をかみ始めた。