夢幻に消えた君と、存在しない約束の続きを。



「あ、そうだ。佑介くん、ずっとこの部屋に閉じこもってると気が滅入るだろ?」


記録を終えた小林先生が、ふと思いついたように顔を上げた。


「一応、今はまだ病気の進行も激しくない。検査の時間や、急に体調が悪くなった時以外なら、病院内を歩き回るのは自由にしていい。売店に行くなり、屋上で風に当たるなり」


「⋯⋯いいんですか? 面会謝絶だって言われたから、一歩も出ちゃいけないのかと思ってました」


「友達に会うのは、脳への刺激が強すぎるからダメだけどな。でも、一人の時間まで奪うつもりはないよ。外の空気を吸うのも立派な治療だ」


​先生はそう言って、僕の肩を軽く叩いて部屋を出て行った。


許可が出た途端、あんなに狭苦しく感じていた個室が、急に拠点のように思えてくるから不思議だ。
僕は数日ぶりにパジャマの上から私服のパーカーを羽織り、おそるおそるドアを開けた。


廊下は、僕の部屋と同じく徹底的に白く塗られている。
けれど、そこには時折、点滴の棒を押して歩くお年寄りや、忙しそうに走り回る看護師さんの姿があった。


僕がいる病棟は面会謝絶の病者しかいないらしい。
それが、今の僕には少しだけ心地よかった。

エレベーターに乗り、僕は一番上の階のボタンを押した。