夢幻に消えた君と、存在しない約束の続きを。



一週間後、僕は無理やり体を動かし、リハビリを完遂してみせた。
数値上の正常を演じ切り、小林先生から退院の許可をもぎ取ったのだ。


「佑介君。無理はしないで。何かあればすぐに戻ってくるんだよ」


「はい。お世話になりました」


僕は病院を出た。
風は、冷たさを残しながらも、確実に春を運んできていた。


「⋯⋯蒼に会いたい」


その言葉が、一歩踏み出すたびに溢れ出す。
病院の外の世界は、以前よりもずっと鮮やかで、そしてずっと残酷に見えた。

僕はこの世界のどこかにいる彼女を、何の手がかりもないまま探し始めなければならない。


病院の門のすぐ外。
そこには、父さんの車が止まっていた。


父さんは車から降り、僕の顔をじっと見つめた。
そこには、止める者の目ではなく、覚悟を決めた男の目があった。


僕は、父さんに何も言わずに車の助手席に乗り込んだ。
父さんも何も言わずにエンジンをかけた。