彼と、花火と、観覧車

「残念だけど、もうすぐ降りなきゃ」

 気がつくとゴンドラはずいぶん地上へ近づいていて、もう少しで一周しそうなところまで来ていた。
 恋人同士になって、せっかく甘い雰囲気になったのに、どうやら時間切れみたい。

「今夜の夜景と花火、一生忘れないよ」

 窓の外を見ながらつぶやくと、彼が私の髪を愛しそうにそっとなでた。

「今度乗るときはマジックアワーにしようか」

 マジックアワーとは、日没前後の時間帯のことだ。
 空の色がオレンジだったり青だったり、昼と夜の移り変わりを同時に楽しめる。

「うん。また絶対乗りたい」

 私たちは長年の思いが叶い、晴れて恋人同士になったのだ。
 きっとこれからは何度でも一緒に来られる。

 この観覧車と花火が、私の背中を押してくれた。
 素直になって、夏生の胸に飛び込んでいいと思えた。

 一周十五分の夢みたいな世界。

 ここが、私と彼を結んでくれた幸せな思い出の場所になった――――


【END】