夜のマンション。
リビングはほのかな照明だけが灯り、
テーブルの上には、
隼人が淹れたばかりの温かい紅茶の香りが広がっていた。
由奈はソファに座り、
両手でマグカップを包み込む。
(……やっと、終わったんだ)
胸の奥に長く居座っていた不安が、
少しずつ溶けていくのがわかる。
麗華の退場。
祐真の拘束。
噂の収束。
どれも簡単ではなかったけれど、
隼人の存在があったからこそ
由奈は今日を迎えられた。
(隼人さんが……守ってくれた)
紅茶を一口飲むと、
喉がほっと温まり、その感覚と一緒に
涙が込み上げそうになる。
キッチンから隼人が歩いてきた。
部屋着姿で、
由奈の隣に静かに腰を下ろす。
「……今日は、本当にお疲れさま」
彼の声は低く、やさしかった。
「はい……
でも……今日ほど“帰ってきてよかった”って思った日はありません」
隼人が少し笑った。
「それは……俺もだ」
ふと、隼人の指が
由奈の頬にそっと触れた。
「もう泣いてないな」
「……泣く理由が、もうありませんから」
答えながら、
由奈の目には小さな光が宿っていた。
隼人はその光を見て、
胸の奥がじんと熱くなる。
「由奈」
「はい……?」
隼人は手を伸ばし、
由奈の肩をやわらかく抱き寄せた。
「こっちにおいで」
その一言だけで、
涙があふれそうになる。
由奈は素直に、
隼人の胸に身を預けた。
隼人の腕がしっかりと回される。
胸板に耳を寄せると、
トクン、トクンと規則正しい鼓動が聞こえる。
(ああ……
これが……わたしの“帰る場所”なんだ)
不安に押しつぶされそうだった夜は、
もう遠い。
噂に怯え、
涙に溺れ、
帰る場所すら見失いかけた日々は——
もう終わった。
隼人が、
その終わりをくれた。
「……隼人さん」
「ん?」
由奈は少し顔を上げ、
胸の奥に浮かんだ思いをそのまま口にする。
「わたし……
今日、職場で……
“隼人さんに守られてるんだな”って……
初めて実感したんです」
隼人が由奈の髪をそっと撫でる。
「俺はずっと守ってたよ」
「……知っています。
でも、やっと……
“信じられた”というか……
ちゃんと気づけた、というか……」
隼人は少し笑って、
由奈の額に軽くキスを落とした。
「今日気づいてくれただけで十分だ」
由奈は胸の奥が熱くなり、
隼人の胸にまた顔を埋める。
「……隼人さん。
わたし……
これからは、もっと……
隼人さんの隣で、ちゃんと強くなりたいです」
「強くならなくていい。
隼人の妻でいてくれたら、それでいい」
「え……?」
隼人はためらいなく言った。
「守るのは、俺の役目だろ」
その言葉が、
由奈の心に深く落ちていく。
(……この人と結婚してよかった)
涙が一粒、隼人のシャツに吸い込まれていく。
「泣いてるじゃないか」
隼人が優しく笑う。
「うれしい涙です……」
隼人は由奈を抱きしめる腕に
ほんの少しだけ力を込めた。
「なら、いくらでも泣いていい」
その腕に包まれながら、
由奈は静かに目を閉じる。
今日の夜ほど、
“守られている”と実感できる瞬間はなかった。
そして同時に、
隼人の胸に抱かれるこの場所こそ——
由奈の“家”なんだと、
心の底から理解した。
リビングはほのかな照明だけが灯り、
テーブルの上には、
隼人が淹れたばかりの温かい紅茶の香りが広がっていた。
由奈はソファに座り、
両手でマグカップを包み込む。
(……やっと、終わったんだ)
胸の奥に長く居座っていた不安が、
少しずつ溶けていくのがわかる。
麗華の退場。
祐真の拘束。
噂の収束。
どれも簡単ではなかったけれど、
隼人の存在があったからこそ
由奈は今日を迎えられた。
(隼人さんが……守ってくれた)
紅茶を一口飲むと、
喉がほっと温まり、その感覚と一緒に
涙が込み上げそうになる。
キッチンから隼人が歩いてきた。
部屋着姿で、
由奈の隣に静かに腰を下ろす。
「……今日は、本当にお疲れさま」
彼の声は低く、やさしかった。
「はい……
でも……今日ほど“帰ってきてよかった”って思った日はありません」
隼人が少し笑った。
「それは……俺もだ」
ふと、隼人の指が
由奈の頬にそっと触れた。
「もう泣いてないな」
「……泣く理由が、もうありませんから」
答えながら、
由奈の目には小さな光が宿っていた。
隼人はその光を見て、
胸の奥がじんと熱くなる。
「由奈」
「はい……?」
隼人は手を伸ばし、
由奈の肩をやわらかく抱き寄せた。
「こっちにおいで」
その一言だけで、
涙があふれそうになる。
由奈は素直に、
隼人の胸に身を預けた。
隼人の腕がしっかりと回される。
胸板に耳を寄せると、
トクン、トクンと規則正しい鼓動が聞こえる。
(ああ……
これが……わたしの“帰る場所”なんだ)
不安に押しつぶされそうだった夜は、
もう遠い。
噂に怯え、
涙に溺れ、
帰る場所すら見失いかけた日々は——
もう終わった。
隼人が、
その終わりをくれた。
「……隼人さん」
「ん?」
由奈は少し顔を上げ、
胸の奥に浮かんだ思いをそのまま口にする。
「わたし……
今日、職場で……
“隼人さんに守られてるんだな”って……
初めて実感したんです」
隼人が由奈の髪をそっと撫でる。
「俺はずっと守ってたよ」
「……知っています。
でも、やっと……
“信じられた”というか……
ちゃんと気づけた、というか……」
隼人は少し笑って、
由奈の額に軽くキスを落とした。
「今日気づいてくれただけで十分だ」
由奈は胸の奥が熱くなり、
隼人の胸にまた顔を埋める。
「……隼人さん。
わたし……
これからは、もっと……
隼人さんの隣で、ちゃんと強くなりたいです」
「強くならなくていい。
隼人の妻でいてくれたら、それでいい」
「え……?」
隼人はためらいなく言った。
「守るのは、俺の役目だろ」
その言葉が、
由奈の心に深く落ちていく。
(……この人と結婚してよかった)
涙が一粒、隼人のシャツに吸い込まれていく。
「泣いてるじゃないか」
隼人が優しく笑う。
「うれしい涙です……」
隼人は由奈を抱きしめる腕に
ほんの少しだけ力を込めた。
「なら、いくらでも泣いていい」
その腕に包まれながら、
由奈は静かに目を閉じる。
今日の夜ほど、
“守られている”と実感できる瞬間はなかった。
そして同時に、
隼人の胸に抱かれるこの場所こそ——
由奈の“家”なんだと、
心の底から理解した。

