蒼銀の王女と誓約の騎士〜生贄として連れてこられた神殿で、千年の眠りから覚めた騎士と出逢いました〜

黒曜石の壁が月を反射し、
銀色の光がセドリクスの横顔をなぞる。
硬質な鎧に着替えた彼は、
まるで千年前の英雄そのものだった。

エリシアは呼吸が乱れるのを感じながら、
彼の名を呼ぶ。

「セドリクス……あのね」

彼が振り返る。
その眼差しは戦士のものではなく、
ずっと自分を支えてきた
――あの優しい光だった。

エリシアは胸の奥にある感情を抑えきれず、
ぎゅっと拳を握った。

「ここまで……本当にありがとう。
あなたがいてくれたから、ここまで来られた。
だから……絶対に、絶対に死なないで。
あなたがいなくなるのだけは……嫌なの」

セドリクスは驚いたあと、
深く静かに微笑した。

「エリシアこそ……我らが待ち続けた約束の姫。
未来を導く、新たな女王。
あなたがいる限り、私は何度でも立ち上がる。
命など惜しくはない。
あなたのためなら――」

「惜しんで!」
思わず声が震えた。
「そんなふうに言わないで……っ」

セドリクスは息を呑み、
エリシアをまっすぐに見つめた。
その表情に初めて、
戦士としてではなく
一人の男としての揺らぎが宿る。

「……エリシア?」

胸が焼ける。
気づきたくなかった気持ちを、
もう誤魔化せなかった。

――ああ、自分はこの人を。
とっくにこの人に、恋をしていたんだ。