蒼銀の王女と誓約の騎士〜生贄として連れてこられた神殿で、千年の眠りから覚めた騎士と出逢いました〜

「――戦いを、止めなさい!」

エリシアの声は、
星の継承院の静寂を震わせるように
鋭く、強く響き渡った。

その瞬間、剣戟の音がぴたりと止む。
殺意に満ちていた空気が霧散し、
まるで世界そのものが
彼女の言葉に従ったかのような、
圧倒的な静寂が訪れた。

セドリクスは思わず息を呑んだ。

――誰だ?この凛とした気配を放つ女は。

ほんの数時間前まで、
自分の後ろを小動物のように
おずおずと歩いていた少女が、
いまは堂々と前に立ち、
空気すら支配している。

その凛とした佇まい。
まるで千年前の王女エルフリーデだ。
けれど、
目の前に立つのはエルフリーデではない。
確かに“エリシア”なのだ。

エリシアはそっと、
血に染まったライオネルの身体を
地面に横たえ、
震える指で涙を拭った。

そして顔を上げたとき
――そこに浮かんでいたのは、
少女の弱さではない。

王の覚悟だった。

「……もう、これ以上誰も死なせたくない。」

その声は震えているのに、
不思議と揺るがなかった。

アストラ・ベインの戦士たちの視線が、
一斉にエリシアへと注がれる。