蒼銀の王女と誓約の騎士〜生贄として連れてこられた神殿で、千年の眠りから覚めた騎士と出逢いました〜

峠を越えた時、
霧の向こうに巨大な白亜の建造物が姿を現した。

「……あれが、星の継承院……?」

エリシアは思わず息を呑む。

天空へ向けて伸びる塔。
流星の軌跡を象ったような石の彫刻。
青白い光がふわりと漂い、
古代の魔力が満ちていた。

「こんな巨大な建物が千年も遺っているなんて……どうして?」

「これらは古代魔法で存在を隠している。アーゼンハイトに見つからないように。だから帝国の人間は逆立ちしたって見えない。王家の"蒼銀の血"にのみ反応するよう細工されているんだ。」

セドリクスは表情を厳しくし、
しかしその瞳には懐かしさが浮かんでいた。

「ここは、千年前……エルフリーデ様と訪れた場所だ。
 まさか再びこの地に足を踏み入れることになるとは……」

「セドリクス……」

エリシアが言いかけたその時――

風が突然、鋭く吹き荒れた。

光の粒が渦のように舞い上がり、
3人の前に道が開かれていく。

まるで“王家の血”に反応したように。

「歓迎……されている?」

エリシアの呟きに、
ライオネルが神妙な顔つきで答えた。

「王族しか開けない道だ。間違いない……
 エリシア様は、本物のヴァルクリオンの姫だ。」

エリシアの胸は、初めての誇らしい感情と、
同じくらい大きな不安で満たされる。

セドリクスはそんな彼女の手をそっと取った。

「大丈夫だ。行こう。」
 
セドリクスの声に呼応するかのように、
星の継承院の巨大な門が、
ゆっくりと音を立てて開いた。