蒼銀の王女と誓約の騎士〜生贄として連れてこられた神殿で、千年の眠りから覚めた騎士と出逢いました〜

ライオネルは気づいていないふりで続けた。

「我らの霊廟は安全だが、いずれここも捜索される。
次に向かうべき場所は……“真王の塔”か?」

セドリクスは首を振った。

「いや。塔はもう帝国の監視下にある。
まずは“星の継承院”へ向かうべきだ。」

「星の継承院……古代王家の宝器が眠る場所だな。」

「宝器はエリシアの覚醒を促し、帝国に対抗する力ともなる。
だが同時に――帝国に存在を知られれば、姫は一層狙われる。」

ライオネルは深く息をつく。

「危険だらけだな。ただ……」

セドリクスを見て、不敵に笑った。

「エリシア様の傍に、お前がいる。
千年前のように、守り抜いてみせるのだろう?」

セドリクスの目が少し揺れた。

「……あの時とは違う。」

「そうか? 随分と、姫君に心を揺らされているように見えるが?」

セドリクスは焚き火を見つめた。
橙色の火が瞳に映り、
彼の感情の揺れがほんの少しだけ露わになる。

「――あの子はエルフリーデ様ではない。」

「それでも似ている。」

「……似ているからといって、同じではない。」

そう呟く声は、かすかに震えていた。
迷い。葛藤。
そして否定できぬ、新しい感情。

ライオネルは深く頷く。

「では、守る理由は“エルフリーデの代わり”ではないと?」

「…………」

答えられない沈黙が、
セドリクスの胸の内をはっきり語っていた。

しばしの静寂。

ライオネルは立ち上がり、マントを整える。

「明朝、出立しよう。
エリシア様を“星の継承院”へ連れていく。」

セドリクスも立ち上がる。

「……ああ。あの子こそ――我らの未来だからな。」

その言葉は、
千年越しの誓いの更新のようだった。