蒼銀の王女と誓約の騎士〜生贄として連れてこられた神殿で、千年の眠りから覚めた騎士と出逢いました〜

「セドリクス……わたし……ちょっと怖いの。
 ここ、なんだか……すごく嫌な気配がして……」

「……エリシア。大丈夫だ。私がいる。この手を決して離さない。……決して、お前を一人にしない」

そう言う声は、
普段の冷静さよりずっと低く甘く、
そして優しい。

エリシアの胸が、きゅん、と鳴った。

「……うん……ありがとう……」

さらにぎゅっと抱きつくように腕を取る。

「(ま、待て……その距離は……!)
 エリシア、その……ほ、ほどほどに……」


「?どうしたの?」

「な、何でもない……!」
赤くなって目をそらすセドリクス。
怖がっているエリシアは、
その意味に全然気づかない。

「じゃあ……一緒に入ろう?」

「……ああ。共に」

彼はそっとエリシアが差し出した
その小さな手を握りしめた。

そして二人は――
静まり返った霊廟へと一歩、
足を踏み入れる。

大扉の前に立った時、
エリシアは思わずセドリクスの袖をつまんだ。
「……ここ、すごく……怖い……」

その声はわずかに震えている。
無意識のまま、
彼女は腕に身体を寄せた。

セドリクスの呼吸が一瞬止まる。

(だから……近い……!)
(い、いや、落ち着け。エリシアが怖がっているだけだ……そうだ……だが……)

柔らかな体温が腕に触れ、
セドリクスの心臓は千年ぶりに跳ねた。

「エリシア。大丈夫だ、さっきも言っただろう。私が傍にいる」

囁くようなその声に、
エリシアは少し安心して頷く。

「……うん。セドリクスと一緒なら……」

(そんなふうに言われたら……)
セドリクスは真っ赤になりかけた顔をそっと逸らした。