蒼銀の王女と誓約の騎士〜生贄として連れてこられた神殿で、千年の眠りから覚めた騎士と出逢いました〜

避難所の奥深く。
アルバレス
――ヴァルクリオン家の最後の王子であり、エルフリーデの弟――
が残した、
魔力で保存された古い記録を読み終えた二人は、
しばし沈黙していた。

「……アルバレス殿下、か」
セドリクスが静かに呟くと、
薄闇に蒼銀の光が揺れた。
その眼差しは懐かしさと敬意、
そして喪失の痛みに満ちている。

エリシアはまだ
胸の高鳴りを落ち着かせられずにいた。
自分が――滅びた古代ルーヴェル王国、
ヴァルクリオン王家の末裔だなんて。
そんな重い現実を受け止めきれず、
そっと手を胸元に押し当てる。

「……私、そんな……大した人間じゃないのに……」
小さく漏れた言葉。

セドリクスは振り返り、
エリシアをまっすぐ見る。
その眼差しは、
彼自身の動揺とは裏腹に、
優しいほどに温かい。

「いいえ、エリシア様。あなたはヴァルクリオン王家の血を継ぐ、由緒ある姫君――
そして……私が、守ると誓った“約束の姫”です」

不意に“姫”と呼ばれ、
エリシアの心臓はドキリとする。
何度も聞いたはずのその呼び名が、
どうして今日はこんなに胸に響くのか。
わからない。
ただ頬が熱くなっていくのを止められなかった。

「で、でも……何をすればいいのか、私……」

そんなエリシアの戸惑いに、
セドリクスは跪き、そっと手を取った。
その指先は、驚くほど温かい。

「アルバレス殿下は、約束の姫のために“道”を残された……ここより東の霊廟に、我の忠実なる騎士たちを眠らせている。彼らを従えよ――それが王国再興の第一歩だ。」