蒼銀の王女と誓約の騎士〜生贄として連れてこられた神殿で、千年の眠りから覚めた騎士と出逢いました〜

アーゼンハイト帝国・黒曜城
重厚な石造りの玉座の間。
夜更けにもかかわらず、
松明が揺れ、
空気は不穏な緊張で満ちていた。

膝をついた兵士が、
震える声で報告する。

「ひ、陛下……生贄の少女が……騎士に、連れ去られました……!」

玉座に座る皇帝ヴァルディス三世の眉が、
不機嫌そうにわずかに動いた。

「……騎士だと? どこの軍の者だ?」

「わ、分かりません。しかし、その鎧に……古の紋章が……!」

皇帝の瞳が、ギラリと鋭く光った。

「紋章……? まさか……どの紋章だ」

「蒼光を象る、二翼の銀鷲です!」

玉座の間が沈黙に包まれた。

皇帝はゆっくり立ち上がり、階段を降りる。
足音が大理石の床に重く響く。

「……二翼の銀鷲。
《蒼翼の王家(ヴァルクリオン)》の紋章か。」

兵士たちが息を呑む。

皇帝ヴァルディスは歯ぎしりし、
低く唸った。

「――やはり生き残っていたか。忌まわしき《ヴァルクリオン王家》の血が……!」

玉座の間の空気が一気に冷え込む。

千年前より伝わる“忌まわしき言い伝え”が、
皇帝の脳裏をよぎった。
『約束の姫が現れし時、蒼翼の王家は再び甦り、
古の栄光を取り戻すであろう』