蒼銀の王女と誓約の騎士〜生贄として連れてこられた神殿で、千年の眠りから覚めた騎士と出逢いました〜

炎の揺らめきに照らされる避難所の奥、
埃まみれの石室の中で、
セドリクスとエリシアは慎重に足を進めた。

古代王家の紋章や文様が彫られた壁面は、
千年の時を経ても色褪せず、
二人の心に神聖な気配をもたらす。

避難所を歩くエリシアの
銀色の髪が揺れるたび、
薄青の瞳が壁の古代文字に吸い込まれる。
ふと、彼女の唇が小さく動き、
意味は分からぬ古代語が零れた。

2人はやがて、
壁の奥に鎮座する古い祭壇にたどり着く。
その上には幾重にも巻かれた巻物や、
漆塗りの宝箱が置かれている。
セドリクスは息を殺し、
ひとつひとつ確認するように近づいた。

「この箱……開けますか?」
エリシアが尋ねる。
手元にはまだ少しの迷いがあった。

「……あなたに開けてもらおう」
セドリクスの声は静かだが、
彼女への信頼と期待が滲んでいる。
エリシアはゆっくりと箱の蓋を持ち上げた。

中には、金糸で織られた王家の衣装、装飾品、
そして煌めく銀色の王冠が収められていた。
すべてが千年前の輝きを保ったまま、
静かに眠っている。
「これは陛下の着ていらっしゃった……」
「こちらは王妃様の髪飾り」
セドリクスはブツブツと呟いている。

「……これが、王家の……」
エリシアもまた、息を呑んだ。
その手で王冠に触れると、
胸の奥に何か温かく、
懐かしい感覚が広がった。
古代の記憶の断片が、
彼女の血の中で微かに震えたのだ。

セドリクスはそっと近づき、
彼女の肩に手を置く。
「……あなたは王家の末裔だ。血筋も、魂の一部も、あなたの中に生きている。これら全てはあなたのものだ。」

「え……私の……?」
エリシアの声は震え、瞳が大きく見開かれる。
自分の存在が、
千年前の悲劇と直結していることを
初めて知る瞬間だった。

「あなたがこの王家の血を継ぎ、再び立ち上がるべき者だと、私は知っている。だから、守る――」
セドリクスの声は低く、
揺るぎない誓いそのものだった。