蒼銀の王女と誓約の騎士〜生贄として連れてこられた神殿で、千年の眠りから覚めた騎士と出逢いました〜



洞窟の奥から、
澄んだ蒼光がゆっくりと揺らめいている。

遺跡の入り口であろう巨石には、
褪せながらも凛とした文字が刻まれていた。
千年前の者たちでさえ限られた者しか読めなかった、
古代語。

なのに──

「……“聖血よ、安らぎと永劫の守りを”……?」

エリシアの口から、するりとその言葉が流れ出た。

セドリクスは動きを止めた。
焚き火の夜にも滲んだあの気配が、
さらに濃くなる。

「姫……これも、読めたのか?」

「わ、分からないの。意味までは……でも、文字を見ると、なぜか言葉が浮かんでくるの……」

エリシアは胸に手を当て、
戸惑いの色を浮かべた。
セドリクスは、
まるで千年前の幻を見ているかのように、
彼女をじっと見つめる。

(……エルフリーデ様。やはり、約束の姫は……)

視界の端で、突然蒼光が揺らぎ始めた。

その光は、ゆっくりと形を成し──
まるで“少女”のような輪郭を描く。

銀髪に、薄い青の瞳。
光でできたその姿はエリシアに酷似していたが、
どこか幼い。

「……誰……?」

エリシアの声は、かすかに震えていた。

光の少女は、ふわりと微笑む。
『エリシア。あなたに会える日を……ずっと待っていました』

耳に染み込む声は、澄んでいて、懐かしくて。
セドリクスの胸が締め付けられる。
「エルフリーデ……様……?」

セドリクスが膝をつくと、
少女は優しく頷いた。
『セドリクス。久しいね。……あなたに託した願いを、聞き届けてくれて嬉しい』

エリシアは驚きに目を見開いた。
「エルフリーデ……“姫”? 王家の……?」