蒼銀の王女と誓約の騎士〜生贄として連れてこられた神殿で、千年の眠りから覚めた騎士と出逢いました〜

日が傾きはじめ、
森の奥へと差し込む光が
蒼く沈み始めたころ。
セドリクスは先を歩く足を止め、
静かに振り返った。

「――ここだ。」

岩壁に隠されるように口を開く洞窟。
草木に覆われ、
誰の目にも留まらぬように閉ざされているが、
その奥からはほのかな魔力の波が漂っていた。

エリシアは息をのむ。
「こんなところに……何かあるの?」

「古代ルーヴェル王家だけが知る“避難所”だ。
 姫……エルフリーデ様と共に、かつて何度か訪れた。」

その名が出た瞬間、
セドリクスの横顔に淡い影が落ちる。
けれどエリシアは気づかぬまま、
導かれるように中へと足を踏み入れた。

洞窟の奥は驚くほど広く、
壁一面に――光を帯びた文字が浮かび上がっていた。

「……これ……」

エリシアの瞳が大きく開く。
蒼白い光の文字が、
星のようにきらめいていた。

彼女は思わず近づき、そっと手を伸ばした。

「エリシア、触れるな――」

制止の声より早く、指先が文字に触れる。

ふっと、空気が震えた。
光がエリシアの手に吸い込まれ、
彼女の唇が自然と動きはじめる。

「……Astra… nofel… ludea…
 ――“星の下に集いし者よ、眠りより目覚めよ”……?」

自分でも驚いたように、
エリシアは口を押さえた。

「ま、待って。なんで……どうして読めるの?
 私、こんな文字見たことないのに……!」