蒼銀の王女と誓約の騎士〜生贄として連れてこられた神殿で、千年の眠りから覚めた騎士と出逢いました〜

朝靄(あさもや)の立ちこめる森を、
鳥の声が静かに揺らしていた。
焚き火の残り香がほんのり漂う中、
エリシアは目をこすりながら起き上がる。

セドリクスは既に鎧の留め具を調え、
刀身を確かめていた。
柔らかな光の中で、彼の銀の髪が淡く輝き、
どこか現実離れして見える。

エリシアは眠気の抜けない声で、

「ねぇ……セドリクス。これから、私たち……どうするの?」
と問いかけた。

セドリクスは一瞬だけこちらを見て、
ほんのわずかに柔らかい笑みを浮かべた。
昨夜、エルフリーデの話をせがまれて
照れていた男とは思えないほど、
今は騎士の顔に戻っている。

「……向かう場所がある。“姫”──あなたが、もっと安全にいられる場所だ。」

「安全な……場所?」

「古代ルーヴェル王国が滅びる直前、王族と守護騎士団だけが知っていた『避難所〈サンクトゥム〉』だ。国家に何かあった時のために秘密裏に造られた場所だ。」

エリシアは驚いて、思わず目を瞬かせた。

「そんな場所が……千年も残ってるの?」

「おそらく残っている。 王家の魔術は、時の流れでは消えない。」

そこへ、セドリクスが少し表情を曇らせた。

「問題は……アーゼンハイト帝国の者たちが、あなたを追ってくるだろうということだ。」

「…………」