蒼銀の王女と誓約の騎士〜生贄として連れてこられた神殿で、千年の眠りから覚めた騎士と出逢いました〜

「ねぇ……もう少し。教えて?」
自分でも驚くほど甘えるような声が出た。

セドリクスは驚いたように目を瞬かせ、
そしてふっと、柔らかく微笑む。
どこか少年のように照れた笑みだった。

「……あなたがそう望むなら。少しだけ」

エリシアの胸がぽっと熱くなる。
火のせいではない、とすぐ分かった。

セドリクスは静かに語り始める。

「エルフリーデ様は……光のような方だった。
 誰もが彼女に希望を見た。
 私のような騎士にも、分け隔てなく優しく接してくださった」

「優しい人だったんだね」

「ええ……。だが強くもあった。
 王国が滅びゆくその瞬間まで、民の未来を案じていらした」

彼の声がわずかに震える。
千年前に置き去りにした痛みが、
焚き火の赤に滲む。

エリシアは胸の奥がざわざわして、
落ち着かなかった。

(どうして……こんな気持ちになるの?
 セドリクスはただ、昔の大切な人の話をしているだけなのに)

セドリクスは続けた。

「……私は、あの方を守れなかった。
 だからこそ、今度こそ――」

そこでセドリクスは言葉を切り、
ゆっくりエリシアを見る。
その瞳に映るのは、もう“過去”ではなく、
目の前の少女だった。

「……今度こそ、あなたを守る。
 それが私の願いであり、誓いだ」

エリシアは胸が跳ね、息がつまった。

なぜか分からない。
なぜこんなに心臓が痛くて、
苦しくて、熱くなるのか。

けれど――
セドリクスの微笑みは、どこまでも優しかった。