蒼銀の王女と誓約の騎士〜生贄として連れてこられた神殿で、千年の眠りから覚めた騎士と出逢いました〜

「あなたはエルフリーデ様に似ている」

ふいに落とされた一言に、心臓が跳ねた。

「私……似てるの?」

「容姿だけではない。
あなたの声、仕草、時折見せる寂しげな眼差し……すべてが彼女を思い起こさせる」

エリシアはなぜか胸が苦しくなった。
理由は分からない。
ただ、どうしようもなく。

(私を……その“姫”と重ねて見ているの……?)

初めて覚えた“胸のざわめき”が、
心の中で小さく渦を巻く。

だがエリシアはその正体を知らない。
恋や愛を知らずに育った彼女には、
この感情が何なのか分かるはずもない。

「……ごめん。変なこと聞いたね」

無理に笑ってみせるエリシアに、
セドリクスはそっと視線を下げた。

「謝る必要はない。あなたが聞きたいことなら、私はすべて答える。——あなたを守るために生きている」

その言葉が、焚き火よりも熱く胸に触れた。
(どうしてこんなに……苦しいんだろう)

火の揺らめきの向こう、
セドリクスの瞳は姫への愛を宿して優しく輝いていた。
エリシアはその光を見つめながら、
知らぬ間に胸の奥で
なにかが芽生えていくのを感じていた。

——それが初恋の始まりだとは、
まだ気づかぬまま。