蒼銀の王女と誓約の騎士〜生贄として連れてこられた神殿で、千年の眠りから覚めた騎士と出逢いました〜

森の奥深くを進み、
人の気配がない小さな洞窟を見つけた。
セドリクスが拾った枝で小さな焚き火を起こすと、
温かな光が二人を包んだ。

 ぱち……ぱち……
 火の音だけが響く。

ようやく落ち着いたのか、
エリシアは膝を抱えながら小さく息を吐いた。

「ねえ……さっき言ってた“姫”って……誰のこと?」

セドリクスはしばらく沈黙し、炎を見つめた。

「——エルフリーデ様。
 古代ルーヴェル王国の最後の王女だ」

「エルフリーデ……」

自分と似た響きの名に、胸がちくりとした。

セドリクスの横顔は、
焚き火の光を受けてとても優しく見える。
その顔がエリシアを見ているのではなく、
はるか彼方の“誰か”を見つめているように感じたから。

「……どんな人だったの?」

問いかけに、セドリクスは微かに笑った。
その笑みはひたすらに優しく、
痛いほど美しかった。

「強く、聡明で……誰よりも人を想う姫だった。
 私は彼女に仕え、その背中を守ることが誇りだった」

 語る声は愛おしさで満ちていた。

「姫は……国が滅ぼされる直前、私には言ったのだ。
 『いつか生まれる約束の姫を守ってほしい』と。
 その願いを胸に、私は千年の眠りについた」

「千年も……?」

 エリシアは思わず息を呑む。
 その長い時、その孤独。その想い。