蒼銀の王女と誓約の騎士〜生贄として連れてこられた神殿で、千年の眠りから覚めた騎士と出逢いました〜

兵士たちは再び武器を構える。

「全員かかれ!どこから現れたのか知らんがその男は危険だ!少女を奪わせるな!」

セドリクスはエリシアを抱き寄せ、
片腕で庇いながら立ち上がった。

「……姫、走れますか」

「え、えっと……走れは……はい……!」

「ならば逃げる。ここは戦場には向かぬ」

「で、でもあなた、囲まれて――」

セドリクスは淡く微笑む。
千年前、
エルフリーデに向けたあの優しい笑みと同じ。

「大丈夫。あなたを守るためなら、我が身体に刻まれた誓いが――剣を導く」

そして彼はエリシアの手を強く握る。

温かくて、力強くて。
なぜか涙が出そうになるほど懐かしい温度。

「姫。どうか、私を信じて」

エリシアは迷った。
でも、不思議と嘘のように怖くなかった。

「……はい!」

二人は駆けだす。
兵士たちが追いすがり、剣が火花を散らす。

セドリクスは走りながら片手で敵の攻撃を弾き、
もう片手でエリシアを絶対に離さなかった。

(今度こそ……今度こそ、守る。
 あなたが何者であろうと、何度生まれ変わろうと――)

胸の奥の千年前の誓いが、
静かに燃え上がる。