セドリクスが千年の眠りから目覚めた時。

蒼銀の光が収束した先に――
怯え、膝をつく少女の姿があった。

銀髪。
薄い青の瞳。
あまりにも、あまりにも――似ている。

(……エルフリーデ……?)
胸が軋む。
痛みとも歓喜ともつかない衝撃が心臓を貫いた。

だが次の瞬間、
憎きアーゼンハイト帝国の兵士の一人が
彼女の腕を乱暴に掴んだ。

「生贄を確保しろ! 儀式を続行――」

「……触れるな」

低く、氷のような声音が神殿に響いた。

セドリクスは一歩踏み出し、剣を抜く。
千年前と変わらない動き。
いや、むしろ眠りによって研ぎ澄まされた刃。

「その娘は――我が姫だ」

「は、姫……? ただの孤児だぞ!」

「黙れ」

一閃。
炎のような銀光が走り、
兵士の武器が床に転がった。

エリシアは呆然とセドリクスを見つめた。
怖い……
でも、どうしてか――胸の奥が温かくなる。
(知らない人なのに……どうしてこんなに、安心するの?)

セドリクスは彼女の前に片膝をつき、
そっと手を取った。
「……姫。長き封印より、ようやく……あなたの御前に」
「わ、私……? ひ、姫? 違います……私はただの――」
「名は、エリシアというのですね」

その名を口にした瞬間、
彼の瞳に複雑な感情が揺れた。
失われた姫と、
目の前の少女を無理に重ねるまいとする葛藤。
それでも魂が、
どうしようもなく惹かれてしまう。

(違う……彼女はエルフリーデではない。それでも――)