蒼銀の王女と誓約の騎士〜生贄として連れてこられた神殿で、千年の眠りから覚めた騎士と出逢いました〜

封印石が砕け散り、
セドリクスはゆっくりと目を開けた。

「きゃっ……!」

小さな悲鳴が聞こえる。
そこにいたのは、儀式の衣を纏った少女。

蒼銀の髪。
薄い青の瞳。
震える肩。
あの日の姫と――あまりにも、似ていた。

(……姫……?)

呼吸が止まった。
魂が、千年ぶりに燃え上がる。

しかし――違う。
この少女はエルフリーデではない。

だが、心が勝手に揺れる。
胸の奥の何かが、彼女へと引き寄せられていく。

少女は涙を滲ませ、
中空に浮かぶセドリクスを見上げて震えていた。

「……だ、誰……?」

その声を聞いた瞬間、
セドリクスの胸が貫かれた。

――姫の声ではない。
だが、不思議なほど懐かしい響き。

「お前は……何者だ……
 なぜ……姫の、気配を……!」

声は掠れ、震えていた。
千年越しの再会にも等しい衝撃に、
心が崩れそうだった。

(姫……私は……どうすれば……?
 この少女を前にして、私の心は……)

千年の誓いと、胸を焦がす新たなざわめきが、
激しくぶつかり合った。

こうして――
セドリクスの長い物語が再び動き出した。