「……じゃあ、透くんと、わたしとで……」

「この夏の謎を、解き明かす」
透くんは、決意したような目をして、短く言った。

わたしは小さく息をのんで、少し遅れてから、うなずいた。

「そうだ……わたし、これからこっちで透くんといろいろ調べるんだよね……。服って、どうしたらいいの? 変な服着てる人になっちゃってるよね…?」

夏休みに向けて、気合を入れて買った服の裾をつまんで見せると、透くんはふっと笑って答えた。

「制服で来れば? 夏霞(なつかすみ)高校は30年前と制服変わってないし、夏休みでも制服着てる生徒は居るから」

「……なるほど……! シンプルなのに、完璧な作戦すぎる……!」

「それとも、お母さんが昔着てた服を借りてくる?」

「え、残ってるかな……。でも、お母さんの服で来るのはちょっと複雑かも……! なんかお母さんが透くんと一緒に居るみたいで……!」

「それのなにが複雑なんだ?」

「なっ、なんでもない!……なんか変かなって思っただけ……!」

こうして——わたしと透くんの、ふたりだけの不思議な夏が、本当に始まった。